例えば、法律ごとに「労働者の定義」を見てみましょう。
労働基準法
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所
に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働安全衛生法
労働基準法第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業
又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)
労働契約法
使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
労働組合法
職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生
活する者をいう。
ついでに、法律ごとの「賃金の定義」も見てみましょう。
労働基準法
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問
わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
労働保険徴収法
この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称
のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの
(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める
範囲外のものを除く。)をいう
健康保険法・厚生年金保険法
この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その
他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受け
るすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える
期間ごとに受けるものは、この限りでない。
この法律において「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その
他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受け
るすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう。
これを見ると、なんだ、「労働基準法」と「労働保険徴収法」の賃金の定
義は一緒じゃないって、そう考えると大間違いで、次のような違いがあ
ったりします。
労働基準法
結婚祝金等の任意恩恵的なものであっても、労働協約、就業規則、労
働契約等によりあらかじめ支給条件が明確になっており、使用者に支
払義務があるものは賃金となる。
労働保険徴収法
結婚祝金等の任意恩恵的なものは、労働協約、就業規則、労働契約
等によりあらかじめ支給条件が明確になっており、使用者に支払義務
であっても賃金とならない。
わーお 大違い
それで、社労士試験は、このような部分を突いてくることが多いわけ
です。
昨年の試験でも「択一式問題」の労働者災害補償保険法[問8]の選
択肢イ(徴収法の問題)が、この部分を就いた問題でした。
(確認してみてください)
こういう法律による違いって、ものすごく気づきにくいですよね。
だから法律を横に展開してみることが必要になります。
「この法律のこの部分はこうだけど、この法律のこの部分はこうだ」
って具合にです。
横に並べてみると、色々なことが見えてきます。
ある程度テキストの内容を記憶したら、今度は法律の枠を超えて、眺
める工夫をしてみましょう
嘉瀬陽介