前回書きましたが、国民年金の老齢基礎年金の支給要件は、次のように改正されました。
①65歳に達していること
②保険料納付済期間及び保険料免除期間(学生の保険料の納付特例による特例期間及び保険料納付猶予制度の規定による猶予期間を除く)を有していること
※ただし、学生の保険料の納付特例期間及びの権料納付猶予制度に係る期間は、受給資格期間の10年の中には算入される)
③保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が10年以上あること
また、厚生年金保険法の老齢厚生年金の支給要件は、次の通りです。
①65歳以上であること
②被保険者期間を有していること
③保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が10年以上あること
ということで、上記2つの支給要件の③「受給資格期間が10年」になったことにより、ほかにどのような点が変更になったかを見ていきましょう。
1.任意脱退の制度がなくなった
2017年8月1日より、老齢給付等の受給資格期間が「25年以上」から「10年以上」に短縮されたことに伴い、国民年金法による「任意脱退」の制度が廃止されました。
例えば、2017年8月1日前までは、社会保障協定の締結国以外の外国人が35歳を超えてから日本に移住したときは、60歳までに受給資格期間の「25年」を満たすことができませんでした。そこで任意脱退が可能となっていたのです。
ところが、2018年8月1日以後、受給資格期間が10年となったことにより、60歳近くになって日本に移住した場合でも、受給資格期間を満たすことが容易となりました。これにより任意脱退の制度が廃止されるに至ったというわけです。
2.老齢基礎年金と老齢厚生年金の短縮特例がなくなった
2017年8月1日前は老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給資格期間である25年には、25年でなくてもよい3種類の「短縮特例」がありましたが、受給資格期間の短縮に伴い、この短縮特例が廃止されました。ただし、遺族基礎年金、遺族厚生年金の長期要件については、この短縮特例は廃止されていませんので注意が必要です。
3.受給資格期間が短縮されたのはあくまでも老齢基礎年金と老齢厚生年金だけ
受給資格期間が10年になったのは、老齢基礎年金と老齢厚生年金だけです。障害基礎年金、障害厚生年金、遺族基礎年金、遺族厚生年金の支給要件に変更はありません。